ポートフォリオの作り方

 BridgeWateのレイ・ダリオ「最も重要なことは資産配分戦略を持つこと」、Yale大学基金「投資成果の要因は資産配分が86%を占める」など、名だたる投資家たちが指摘する通り、資産配分は運用を行うにあたって極めて重要な要素です。

 

 そもそも、資産価格はなぜ上昇するのでしょうか。短期的にはテクニカル的要因、長期的にはファンダメンタルズが資産価格を形成します。投資戦略によって重要なファクターは異なるものなので、詳細は後述します。ファンダメンタルズのなかでも、とりわけ先進国の実質GDP成長率は今後どのような見通しでしょうか。国際通貨基金(IMF)によれば、2019年、2020年におけるグローバル経済成長率は、それぞれ3.5%、3.6%です。直近では英国を除くG7は潜在成長率以上の成長をする見込みです。また、英プライスウォーターハウスクーパースは、2042年までに世界のGDPは倍増する調査結果を出しています。

 

 資産価格の形成要因である、「世界の経済成長」は今後も続く見通しであるのにもかかわらず、負け越す投資家が続出しています。なぜでしょうか。理由は大きく二つに集約されると考えています。

 ① 個別リスクに晒されている

  • 「成長の見込まれる会社を持っている」:個別企業に投資している場合、投資先の業績が悪化すれば下落します。
  • 「複数のセクターの株式を幅広く所有している」:セクター・国に対するバランスをとっている場合でも、株式市場全体に連動します。
  • 国債と株式をバランスよく持っている」:ゴルディロック等など株式と国債が同じ方向に動いたり、リスク量に対するバランスが偏っているケースでは、株式の下落によってポートフォリオ全体が大きく下げる。
  • 「ハイパフォーマンスを継続する大学基金を真似している」:ハーバード大学やイェール大学のオルタナティブ戦略は往々にしてダウンサイドに弱く、キャッシュが潤沢である必要がある。

 

 ② 値動きが大きい。

  • リスク資産は往々にして値動きが大きいです。例えば、株式が20%下落した場合、25%上昇しなければ同じ期間で投資金額を取り戻すことはできません。また、こうした値動きは、ヘッジファンドの高速取引が増加して高まりやすい傾向です。

 

上記①②の状況に陥ってしまう背景には、偏った資産配分があることが多いです。また、偏った資産配分が発生してしまう背景には、まず、「どれだけ複雑なモデルを組んでも将来は読めないということを忘れていること」が挙げられます。実際に、あらゆる金融のテクノロジーを駆使して予測された金利は、ほとんど当たらないのにもかかわらず、「FRBは2019年に利上げを行わない」という中心的なシナリオに強い自信を持つ方も多くいます。そして、複数のシナリオを考慮せず過去のデータだけを参考にするなど、ポートフォリオの構築にとって大切なプロセスを省略してしまうことによる弊害が考えられます。

 

 ①②を避けるためには、適切なポートフォリオの構築プロセスを踏襲することが有効だと考えています。正しく分散投資を実行すれば、(A)リスク要因を分散させ、(B)値動きを抑えるという分散効果を発揮しながら、経済成長等によるリターンの確実性を高めることができるからです。

 

 具体的な(A)リスクの分散、(B)値動きの抑制といった分散効果を発揮させるコツは、ポートフォリオ資産を増やすよりも、値動きの向きが異なる資産を、値動きの大きさと比較しながら組み合わせることです。その値動きの方向性と大きさを表す代表的な指標は、それぞれ相関係数標準偏差です。

 

  • 相関係数は、資産の値動きの向きを表し、-1~1の間の数値をとります。複数の資産の値動きの「方向性」が同じならば相関係数が1、関連性がないならば0、逆に動くならば-1に近くなります。例えば、日本と先進国株式の相関係数は0.8です。世界株式バランスファンドに投資すれば分散投資の効果を期待できるのではないかといった話を聞くことがありますが、実際には分散しているつもりでも上記にあげた分散効果はあまり発揮できていません。相場全体によって先進国の株式が下がれば日本株式も同様に下げることが多いからです。一方で、日本株式と国債相関係数は-0.32ですから分散効果を期待できます。
  • 標準偏差は、資産の値動きの「大きさ」を表します。年率標準偏差国債2.1%、日本株式18.7%です。相対的に国債に対する日本株式の値動きが大きいということです。ですから、日本株式と国債を持てば十分なのかと問われればそうではありません。例えば、日本株式50:国債50の割合で投資すると、日本株式が下落したときに国債ではその下落を埋められるほどのリターンは埋めることができません。これが標準偏差です。

 

重要なことは、相関係数の小さな資産クラスを選び取り、標準偏差の大きさを比較しながら保有割合を調整することです。その結果として、別々の資産がお互いに値動きを相殺し合いながら、米中経済の成長を着実に刈り取っていくのです。

 

 分散投資によって、どの程度値動きが抑えられるでしょうか。分散投資のイメージは、複数資産の合成ポジションといったほうがわかりやすいでしょうか。例えば、日本株式50:金50という割合で投資した場合、 標準偏差はそれぞれ18.7%、17.2%ですので、標準偏差の平均は17.9%ですが、全体の標準偏差は13.9%まで低下します。日本株と金の標準偏差の平均よりも4%の値動きが抑えられるということです。これは、お互いの資産が、それぞれの値動きを相殺しているから発生する効果です。また、どれほどの値動きが抑えられるかは、資産クラス間の相関係数の低さによって決まります。ですから、グローバル株式などといって日本株と先進国株式など強い相関を持つ資産に投資した場合はあまり値動きが抑えられないということになります。なお、一般的な相関係数は過去のデータから計算されたものであるため、後述するように、リスクシナリオをもとに調整することが必要です。

 

 こうした考え方を突き詰めていくと、リスク許容度に対して、どれほどのリターンを得ることができるかという問いが最終目的地のように思えます。リスク許容度とは、投資の収益がどれほどマイナスになっても受け入れることができるのかを指す度合で、基準は5%程度です。そして、そのリスク許容度の範囲内で、リスク1%に対して得られるリターンを最大化する戦略を立てるのです。話を分かりやすくするため、「1%のリスクに対して、リターンを最大化する方法」を探ります。例えば、銀行とのお付き合いで、国債に全資産を投資する場合は、リターン1.7%、リスク2.0%ですので 1.7÷2=1リスクあたりのリターンは0.85%です。国債90:日本株10の場合は、リターン2.5%、リスク2.1%ですので、1リスクあたりのリターンは1.19%です。 後者の方が、投資効率としては優れているということです。全ての資産の組み合わせで、この数値を少しずつずらしながら最適な配分比率を決定します。



 上記を踏まえて、資産配分を決定するには、どのような手順をとればいいでしょうか。それは資産配分の種類によって異なりますが、大きく分けて3つあります。

 ① 戦術的資産配分

 ② 戦略的資産配分

 ③ ゴールに基づく資産配分

 

①戦術的資産配分は、6ヶ月など短期的な投資期間で、目標収益の獲得を狙います。相関係数を利用することはあまりなく、資産クラスの予測リスク・リターンを独立して計算してポジションを取ります。

②と③は相対的に長期的な投資期間で、目標収益の獲得を狙います。資産クラス間の標準偏差相関係数を考慮しながら、合成ポジションにおけるリスク・リターンのデータに基づいて分散を行います。②と③の違いは、後者は複数のタイムホライズン、運用目標、リスク、資金需要等を考慮に入れている点で、「個人はユニークで、それぞれ異なる」という視座に立っていることです。ほとんどの顧客は複数の目標を持っていたり、急に目標ができたり、古い目標が修正されたりするため、複数のタイムホライズンの中で、それぞれのリスク、資金の需要を持っているため、それに合わせて資産配分や商品の選定を調整します。どの資産配分の方法がいいのかについては、大幅な下落・アルファを創出できる等の局面や、投資家の目的・リスク許容度等によって異なるので一概に「これがベストである」とは言えませんが、顧客との信頼関係や要望に応じて、コア戦略として②と③を選び、大幅な下落局面においてサテライト的に①を実行することが多いです。



 具体的な手順です。基本的には、リスク許容度のもとで最大のリターンを目指します。そのために、投資手法に見合ったファクターを選定し、複数のリスクシナリオを検討したのちに資産配分等を決定します。

 

①目的の確認

 顧客に、やりたいことや今後訪れるプランについて確認します。多くの型は、ライフステージ毎に資金管理手法を変えたほうがいいかもしれません。やりたいことにキャッシュを使う予定があったり、年齢を重ねるにつれて大きなリスクを取ることができなくなったり、相続の準備を開始したりするなど、人それぞれお金を使う時期、投資スタンスなどが異なるからです。例えば、30代後半までは流動性を確保し、結婚や出産、教育、住宅の購入などの臨時出費の資金を確保ししつつも、貯蓄、積極的な運用等によって少しずつ老後への備えを行います。キャリアの後半では、流動性の確保もさることながら、積極的な運用によって老後への備えへと比重を移しつつ、少しづつ生保や組織確立等によって資産承継の準備をします。退職後は年齢ごとにより細かく設定します。まずは、生活や趣味の資金を中心に流動性の確保、安定的な運用による老後への備え、事業承継や生前贈与などの資産承継の準備を緻密に始めます。特に、争続や浪費人への相続をしたくない場合は、それを目的とした明確な準備が必要です。その他にも、年齢によるリスク許容度や資金需要の変化に応じて、定期預金の比率を高めたり、デュレーションの短い債券を保有したり、株式保有割合などを組み替えたりします。流動性の確保では、2年以内の資金は定期預金やMRF、5年以内の資金は低リスク低リターン、それ以上の資金はPFなどに充当することが多いです。異なるレイヤーですが、若い方は7年以上の投資期間を設定することが、投資効率の観点で優位に立つことができます。例えば、株式と債券を50:50で投資した場合、1年目の債券に対する株式の標準偏差が13.9%であることと比較して、7年目以降に債券に対する株式の標準偏差が7年目以降に1.8%程度に減少します。12%程度リスクを抑えることができることを意味します。リスク指標であるCVaR(期待ショートフォール)は、1年目の債券に対する株式の数値が-35.8%であることと比較して、7年目以降に債券に対する株式の数値は-5%程度に減少します。ですから、長期で運用できる資産があるケースでは、長期的なスパンに立った投資を推奨しています。たとえば、70代前半までは長期のタイムホライズンを念頭に株式比率を高めに設定し、70代中盤をめどに債券比率を高めていく手法が考えられます。

 

②リスク許容度の確認

 必ず、リスク許容度を超えない範囲でリターンを最大化する戦略を作ります。  

リスク許容度は、ポートフォリオ全体の標準偏差の目標で、最大でどの程度の損失を受け入れることができるかの度合いです。基本的なリスク5%から、年齢、ご家族、資産、年収や趣味などの項目からなくなってはならない金額や、経験、投資スタンス等を何度も確認しながら調整します。

リスク許容度が5%ならば、席分布上68%の確率でリターン-5%~10%に収まります。標準偏差を2倍にするとその区間で資産価格が落ち着く可能性は95.45%となり、リターンは-10%~15%になります。

 

③ファクターとそれに影響を与えうる重要課題の確認

 足元のニュース(重要課題)が、先進国の経済成長などのファクターにどのような影響を与えるのかということについて考えます。以下に記述するファクターは、資産価格に大きな影響を及ぼす項目です。

 

  • 戦術的資産配分では、比較的短い期間の投資ですので、テクニカル的な変数が重要なファクターとなります。例えば、モメンタム、クオリティ/グロース、バリュー、ボラティリティなどが当たります。
  • 戦略的/ゴールに基づく資産配分では、ファンダメンタルズが重要なファクターです。相対的に長い期間の投資であり、長期的に見ればファンダメンタルズがマーケットを形成するという原則は現状正しいです。基本的には、金利の上昇/低下、高成長/低成長に関する項目を中心にとしたファクターです。その内訳について、特に重要な項目を上げるならば、予想外のインフレ率の上昇、将来の不確実性、先進国の経済成長率、新興国の経済成長率、先進国のスプレッド(デフォルトリスクや需給)、新興国のスプレッド、為替(通貨を分散する場合、必要に応じてヘッジを利用することがあります。)、実質金利(中銀の政策)、コモディティ価格です。なお、「米国市場によって世界の株価は大きく決まるのだから、米ドルオンリーというポジションでいいのではないか」ということを聞きますが、これまでのマーケットではそれでよかったが、今後はわからないというスタンスです。

 

 戦略的/ゴールに基づく資産配分において、ポートフォリオとしての資産価格に対するファクターの寄与度は以下の通りです。難しく考えたくないという場合は、少なくとも米中を中心とした先進国経済の安定性を追っておくことが重要です。

  • 先進国の経済成長率:66%
  • 為替:18%
  • 先進国のスプレッド:10%
  • 実質金利の不確実性:9%
  • 新興国の経済成長率:2%
  • 新興国のスプレッド0%
  • 予想外のインフレ-10%

 

 上記のファクターが資産価格に大きな影響を与えます。では、ファクターは何によって決まるでしょうか。このファクターを上下させる要因は、米中貿易、FRBの金融政策や中国の景気刺激策などの重要課題です。そうした重要課題単体では、大きく資産価格が動くことは稀なケースですが、重要課題が組み合わさった結果として、予想を下回る経済成長率が見込まれる、資産価格は影響を受けます。重要課題の組み合わさりをリスクシナリオと呼びます。

※別のレベル感ですが、ゴルディロックや景気サイクル(5-7年)の大まか位置を掴むことも重要です。いつサイクルが転換するかはわかりませんが、大まかな位置を確認し、リセッションに備えることができるからです。なお、HPフィルターを利用して150年のトレンドを分析すると、短期的に転換点を予測できる人はほぼいない、中期ではまちまちであることがわかります。リセッションでさえ具体的な時期はほとんどの方が予測できないのです。ですから、シナリオは一つだけではなく、考えうる限りの数を検討します。

 

④複数のリスクシナリオの策定

資産配分を検討する前に、必ず複数のリスクシナリオを作ります。資産がどのようなリスクの上に横たわっているのかを理解することなく、相関係数標準偏差を使って資産配分を決定することは、重大な損失を招く恐れがあります。例えば、ゴルディロックが挙げられます。15/12月にFRBが1年間の利上げ停止を実施してから、株高=債券高の時代が続いていましたが、今年の1月にFRBやECBが利上げを始めたり量的緩和政策の終了を示唆している時には、徐々に逆相関になりました。過去のデータのみを使って、株と債券の相関性やリスクを割り出し配分比率を決定することは万能ではありません。そうした数値は必ず"将来"のシナリオを使って調整する必要があると考えます。

 

シナリオの位置付けとしては、重要課題(例えば米中貿易)→シナリオ(例えば米中貿易と金融政策の組み合わせ)→ファクター(例えば、予想以上の先進国の経済成長率の減退)→資産価格への影響です。複数シナリオとは、ベースシナリオを中心として、悪いシナリオ、良いシナリオなどを仮説的に作っていきます。リスクシナリオのいくつかは、別の記事「ポジション管理」に記載したので、ご覧いただけますと幸いです。

 

⑤リスクシナリオの経済・資産価格に対する影響の評価

リスクシナリオがマーケット・資産価格へどういう影響を与えるか考えます。経済成長率やインフレ率などのファクターによって、資産価格等に対するベータを調べます。資産価格等とは、例えば、平均リターン、標準偏差相関係数、CVaR(下方リスク)等を含みます。リスクシナリオごとに、データの期間やファクターの種類を変えながら、テストしてみます。

 

 ここでは単純に、ファクター(インフレ率)と標準偏差のみを使って、TIPSの配分比率を導出してみます。少し長くなるので、データプロットと結果だけを表示します。例えば、米国のインフレ率と標準偏差があったとします。

 

 単純な事例ですが、インフレ率とTIPSのリターンの標準偏差のみを使って、TIPSをどの程度組み入れたらいいのか検討します。

  • インフレ率:2.15%(98-17)、標準偏差:1.01%(98-17)→ 0%
  • インフレ率:2.15%(98-17)、標準偏差:3.03%(70-17)→13%
  • インフレ率:4.04%(26-17)、標準偏差:2.15%(26-17)→36%

 

 2020年かそれ以降か転換点はわかりませんが、リセッション入りが懸念されているので、景気後退前の期間、後退後の期間の短期、中長期のデータを使って分析することもあります。

また、上記の標準偏差の元となるデータは簡易的に税金控除前のリターンを使っていますが、各種コスト(手数料、信託報酬、税金、デフォルトリスクなど)を差し引いた正味のリターン/リスクで計算することを推奨します。商品によっては大きな差異が生まれてしまうからです。米国の地方債は税金がかかりませんが、国債社債は一般的にキャピタルゲイン20%、クーポンに37%の税金がかかるので大きな成果の差が発生します。また、デフォルトリスク等を期待リターンから差し引くことも正確な計算のためには必要です。

 

ポートフォリオ(仮)決定

前項目までのデータを使って、リスク許容度を超えないように資産配分を決定します。ポートフォリオ全体の標準偏差が、リスク許容度に近くなるようにポートフォリオを組むのですが、この時に年率リターン、CVaR、最大ドローダウン、シャープレシオソルティノレシオ、流動性等々を確認しながら、最良な資産配分を決定していきます。

ご参考までに、上記までのデータを使った抽出された基本ポートフォリオの事例です。

 

  • 流動性:2%
  • 米投資適格(国債、TIPS 社債):40%
  • 先進国HY:5%
  • 先進国株式:27%
  • 新興国株式:5%
  • 世界不動産:3%
  • 世界インフラ:3%
  • 資源:5%
  • HF:10% ※生保ファンドならば24%も可能

 

⑦どの時点でジョインするか

 ドル・コスト平均法の優位性はあると考えます。しかし、よく運用会社で推奨されている「毎月積み立て」は、工夫の余地が残されています。毎月積み立てによって、景気サイクルの位置に関わらず、毎月という間隔で資本投下すると、上昇トレンドでは平均単価を上げてしまうというリスクがあります。また、現在から、ドル•コスト平均法の効果が発揮されやすい急落局面〜上昇に転じるまでの間、投資を継続できるほどキャッシュが潤沢であるかという点が重要になります。

 ですから、ポートフォリオの組成期間、一回あたりの投資金額、投資間隔は重要なポイントです。過去の景気サイクルの終盤局面を分析すると、3月から投資を始めるならば、約2.7ヶ月毎に、総投資額の5%(最後の複数回は10%)ずつ投下して行き、4-5年程度かけてポートフォリオが完成するイメージです。UBSのレポートで、機関投資家が予想するリセッション入りは2020-2021の期間で75%でしたが、上記の間隔で投資を続ければ2024年までに急落局面が来れば購入単価が極めて安くなります。急落後は二番底を警戒しながら、通常中銀による金融緩和によって上がり始めるのでしばらくの間は資本投下を継続します。また、商品毎にエントリー期は変えてもいいかもしれません。例えば、クレジット関連は格下げやスプレッドの反転に備えて、高格付かつ短いデュレーションから手をつけたり、小型やHYなど流動性の低い商品は様子を見てもいいかもしれません。

 

⑨運用対応

 主に、以下の対応が挙げられます。

  • 相対的に上がったものを売り、下がったものを買うことによって、資産配分比率を維持します。
  • 戦術的資産配分を組み入れて、バーゲンハンティングのような機会があれば拾います。また、企業業績が落ちて、株式マーケットでリターンが取りにくくなる局面では、資産配分を組み替えたり、アルファを狙う短期的な売買を行います。しかし、昨今から続く量的金融緩和でアルファが創出される機会も減少しています。金融緩和→低金利ボラティリティの低下→価格変動の差分が縮小するという流れです。しかし、今後はこれまでとは異なるかもしれません。現状ドットチャート上では0回の利上げですが、量的金融緩和の縮小でアルファの創出機会が増えるかもしれません。
  • 経済/金融のページを執筆しますが、各種指標をチェックしながらリスクシナリオ・資産配分を調整します。短期で変わることはまれなので、四半期に一回という感じでしょうか。一例ですが、
  • 重要な指標と考えられるものは、すべてチェックします。
  • 2-10年のイールドカーブFOMCの誘導目標と市場の折り込み度合い(先物など)、政策金利と同じくらい長期金利は上がるか検討
  • 失業保険新規申請者数(3ヶ月先行)、失業率、雇用者数/非正規社員(経営者の見通し)と比較しながら、大きくマイナスになったら注意
  • PMI、特に米国のISM製造業は24mくらい先行、ドイツZEW期待指数、現状指数
  • 単位あたりの労働コスト(非農業部門は30Q先行)が上がれば、消費者信頼感、コアCPIも上がりやすく、FRBの金融政策にも影響
  • 原油先物
  • コンテイジョンは調整前に起きやすいので、トルコ、イタリア、アルゼンチンなど脆弱な国や、インドネシア、マレーシア、ポーランドなどの経常収支が悪い国を観察。こうした国々はUS Liborのスプレッドが上がるとドル調達が難しくなるので、世界経済に先行して落ちることがあります。いくら金利が高いとは言え、物価が急激に上昇してしまえば為替は上がりにくなります。
  • クレジットは、デフォルト率とデュレーション(50年程度の変化)を追います。昨今の金融政策によってGDPを上回るほどに起債が増えていて、一方で資金した資金の多くは自社株買いに費やされています。多額の起債は高い利回りが正当化しているようですが、利上げ局面では生産性との兼ね合いでは一つのイベントになりかねません。

  

レバレッジデリバティブは別の記事で執筆しようと考えています。

※資産のリターン・リスクのデータは過去のものですので、現在と過去の違いからデータを検証し直す必要があります。例えば、新興国債市場は非常に大きな市場規模で、ある程度低いリスクで高いリターンを獲得することができました。しかし、先進国の財政悪化によって信用リスクが増大し、先進国の成長率低下による利回りの低下もあいまって、先進国国債のリスクは大きくなって来たのにも関わらず、利回りは8→2%と数十年前と比較して悪化してしまいました。





目標 一番大切なことを一番大切にするということ

一番大切なことを、一番大切にすること

友人、顧客、上司と多方面から、「変人」、「新人類」と命名されることが多いのですが、その理由を考えたときに、思い当たる節がいくつもあります(笑)。ひとつは本職のほかにたくさんの活動に取り組んでいて、軸がないと思われている(気がする)ことです。適当に生きていることは否めませんが、それでも立脚点はあります!

特別な思想や宗教・神を持っていないので、情報や人と触れ合う過程で日々揺れ動こともありますが、自分の立脚点をあえてあげるならば、好きな人たちに大切なことを大切にしてもらうことです。「酸いも甘いもひっくるめて頬を過ぎていくことが人生なのだ」といわれれば、大切なことを大切にできないこともある、それはそうなのかもしれないと思うものの、少なくとも好きな人たちには不幸になってほしくない。そして、思うだけでは満足できずに、実践しつづけたい立場にいます。こんな私ですが、いろいろありまして、いつも赤ちゃんの物まねとか、猫の物まねとかしている私ですが、今回は真剣に語ります。

 

空から落ちてくるものはすべて希望だと思っていた。

ショートムービーに熱中していたことがあります。いわゆる処女作なので、見るに堪えるものではないですが、米軍が中東を爆撃し現地の家族が離れ離れになるというシーンをがんばって撮影しました。こんな感じです。米軍による砲撃の直後、父は娘の不在に気づきます。途端に不安になり、瓦礫と粉塵の中を、次にいつ来るかわからない砲弾に臆することもせず、大声を上げながら探し回ります。彼はもともと自宅のあった付近の瓦礫をかき分け続け、やっとの想いで娘を見つけましたが、不幸にも娘はすでに息絶えていました。想像してください。彼が愛する娘を両腕に抱え上げたときに、彼の白いシャツに娘の血がじんわりと染まっていく瞬間を。彼は娘の命がすでにないことを認知していますが、病院に向かって駆け抜けり、病院のスタッフに「受け入れるスペースがないからあきらめてくれ」と断られても次の病院を探しつづけるというものです。空は、あまりにも抽象的なその具体は、希望しか落ちてこないと思っていた。しかし、現実は希望ではなく、ミサイルだった。そして、それが両親や、友人、好きな人だったなら。

このショートムービーのタイトルは、長い間悩んだ結果「空から落ちてくるものはすべて希望だと思っていた」とつけました。皆様も同じような経験があるかもしれませんが、20代半ばごろには一番大切な人を亡くして、ひどく落ち込んだときに撮影したものです。

仲のいい友達、大切な家族と深い関係の最中過ごす感覚と、それを失った後の生活感覚とのズレは、結構しんどいものです。それを想像力ではなくてリアルに体験したひとは、役立たずと思われることに恐怖を、裏切りに異常な怒りを、信託されたいと願い、誰かの孤独を許さないということを、考えずとも身をもって理解していると信じています。

 

人生は短く、あなたのものだ。

当然のことながら、生きていれば、何かをあきらめなければならない瞬間は起こりえます。その背景には、時代・イデオロギー、当人の置かれた具体的な環境、日常の忙しさによる時間のなさ、感情の乱れ、人間関係、資金不足など色んな要素が絡み合っています。そして、それがあまりにも複雑なので、「手の施しようのない」という印象を持つことも多々あることと思います。しかし、私がPBで学んだことの一つは、絶対に無理だろうと考えることのうち95%はなんとかなるということです。少し業界の話で喩えます。

私は心の中で無理難題テストと呼んでいますが、企業オーナーは知ってか知らずか無茶ぶりが多いです。「会社の株価がストップ高する事業案を考えてこいー」、「街で落としたイアリングを探してきて!」と訴えかけられたからにはむげに断ることもできずに仕事をしなければなりません。その度に、頭を抱え暗中模索しながらも何とか回収してきました。なかには失敗したこともあり、事実イヤリングは見つかりませんでした。ちょっと悔しいです。

そんな道程で、無理難題テストを回収するためにはどのような優位性は確立すれば成功するのか、その技術的なキモとは何かについて考えてきました。考えるべきレイヤーは多岐に渡りますが、特に重要視すべきポイントは、献身性・信託と資本装備率・資本収益率です。前者はいずれ触れるものと思うので割愛させていただき、今回は後者を少しだけ説明します。資本装備率とはお金、人的資本、知識や洞察、気持ち、時間に関する資本を十分に持っているか、資本収益率とは上手に使えているかということです。お伝えできることは職柄少ないですが、名医とのアポイントを提供して子の難病に対する治療法が見つけてもらったり、経済資本と優れた洞察力を持ち主を紹介して間接的ではありますがDDRを組織して不当な武力闘争を防いでもらったり、音楽に対する熱い気持ちがある顧客に労働力を提供することによって相続されずに消えるはずだった版権を保護してもらったり、その他にも株式投資家が注目する事業を作ったり、身近な家なき子に食事させてあげたり、PBを通じてたくさんの目標に触れることができました。PBは大変な仕事ですが、大好きな仕事でもあります。資本装備率・資本収益率を時には無理やりにでも備えることによって、無理難題の達成率が上がることを身をもって思い知らされた次第です。

人生は短く、各々のものであるべきです。そして、生きていく過程で各々がユニークな目標を見つけるものと思います。家族であっても、私は断片的な情報しか認知できませんが、ユニークなゴールが本当に大切なものならば、断片的であっても私の一生をこえると思っています。たとえ不可能と言われることであってもあきらめることなく、最大限の力を使いたいです。

PBに必要な能力

PBの仕事は、「資産管理でも、事業でも、顧客の求めることに対して、役に立ち続ける」と定義しています。その上で最も重要なKPIは「スイート・スポットの特定数」「献身性」であると考えます。 

会社にもよると思いますが、PB業の仕事は以下のような流れを辿ることが多いです。

(1)ソーシング(見込み顧客リストの作成に始まり、営業活動、ヒアリング)

(2)価値をもたらす機会の査定~プロジェクト(運用,事業)の策定

(3)法・税の調査、プロジェクト化(やることの分別,アウトソーシング等の決定、期日管理)

(4)エクセキューションとコンティジェンシー対応

事業、運用、趣味や慈善事業などプロジェクトごとに多少の違いはありますが、(1)顧客開拓を実施した後は、(2)プロジェクト策定〜(4)実行というサイクルをひたすらに繰り返すことが求められます。1人の顧客に対して、1人の営業マンが、数十年にわたって、多様なプロジェクトに挑戦します。主なバリューは運用や税務によってもたらされますが、これは顧客によって様々です。PBの顧客にマス層はいませんから、「顧客と顧客の目標もユニーク」という認識を強く持つべきです。例えば、「運用によって毎年8%の益がほしい」という顧客もいれば、「事業によって、より良い世界を創造したい」あるいは「版権者によって独占されたプロダクトが、世界の底に埋もれていく問題を解決したい」など、個々人によって達成したい目標は異なります。ですから、ただソリューションを提供するというよりは、顧客の横で思考錯誤しながら一緒に歩んでいくというフローです。

そのような多数のプロジェクトに取り組むなかで、私たちに必要な能力を考えてみたいと思います。

-領域ミクロ:経済、金融、会計など投資にまつわる分析能力。

-領域マクロ:運用戦略、ポートフォリオ構築、商品、マーケティング、戦略、資金調達、会計、税務に関する知識と経験。

-汎用能力:優れた人格、プロマネや交渉能力、豊富な人脈。

-働き方:24時間働くことの体力、最後までやりきる粘り強さ。

上記に列挙した能力はいわば一つのプロジェクトを完結するために必要な能力と言えます。一方で、訓練や気の持ちようでどうにかなるレベルの能力です。具体的なプロジェクトが目の前にあって、そのデューデリジェンスや実行支援という流れの中で求められる能力ではありますが、上記のような多様な項目について専門性を持ち、更新していくことは不可能です。しかし、矛盾するようですが、磨き続け続けなければいけない能力でもあると考えます。

一方で、上記の能力が功をそうするためには、「顧客を知る」能力が何よりも必要です。顧客が企業オーナーであれば、事業や趣味について詳しくなって、常に顧客が何に関心を向けているか、何をやり遂げたいか、何が嫌いかなどを飲み会や面談時にできる限り理解したいです。上述の通り、顧客自信も、顧客の目標自体も、それぞれユニークですから、絶対に平均化してはなりません。

私の認識では、そのような「ユニークな目標」について「プロジェクト完遂能力を発揮する」ためには、優秀な営業マンは特に(1)ソーシング、(2)価値の特定の点で優れている必要があると考えています。つまり、不況などの事業・運用が困難な情勢でも能力のある営業マンにとっては多大な機会が存在し、皆様のお役に立つことができますが、一方で,繰り返し大きな価値をもたらしうる機会を特定・実施できるプロセスを構築している営業マンは多くない印象です。これは営業マンの能力を図る上で非常に重要な点です。私は「無理難題テスト」と呼んでいますが、顧客が営業マンに対して、繰り返し無理難題を押し付けてみれば、上記の意味において優秀か優秀ではないか(役にたつか)判別できるということです。

ここまで、あらゆる能力について、語ってきましたが、本質的に最低限これだけは必要なKPIを問われれば、スイート・スポットの特定数です。それは顧客のニーズを捉える×多大な価値をもたらすというものです。その数が、最重要の指標だと思います。そのためには、「顧客のことを知り、本当に役にたつものは何か」を洞察する力とプロセスの構築が少なくとも必要という結論です。プロセスの方法も無限にあると思いますが、私の場合は研究サークルを組成しました。詳しくは「インナーサークル 「永遠に資本を生み出す装置」を目指して。」に記載の通りですが、上場企業・ベンチャー企業のオーナー、IBD。法務税務、慈善事業、アルバイトで構成する28名による事業・運用のスイート・スポットを特定・査定する団体を構築し活動しています。どのような活動であれ、スイート・スポットを特定し続けるための活動は、「ユニークな目標」について「プロジェクト完遂能力を発揮する」の根本にあると思っています。顧客の目標(ニーズ)を考えてみたり、その閾値を越えた解決策を考えてみたり、という流れは私一人という資本装備では、「繰り返し大きな価値をもたらしうる機会を特定する」ということも、「上述にあげた能力を一人でカバーする」こともとても難しいことですから。

多くの場合、「無理難題」「大風呂敷」が物をいう世界です。そうでなければ、多くの企業オーナーは、初回のアポイントメントを取るときも、その後のおつきあいの中でもこちらを振り向いてくれないためです。ですが、一度広げた風呂敷は何が何でも全力回収しなければ、信頼を失うだけです。逆に、「無理難題テスト」をクリアした暁には、信頼を獲得し、その後数十年に渡るおつきあいができる可能性があるのです。

「落し物を探します!任せてください」と宣言したならば紛失物の捜索をやり遂げなければなりませんし、「業界一優れたサービスを考えます!」と宣言したならばその会社がストップ高になるくらいやらねばなりません。「管理が欲しい」と依頼されれば、少なくとも1,000戸は提供しなければならないと考えますし、「有名人を紹介して」と言われたならば、オリンピックメダリストを無償で斡旋しなければなりません。最終的に顧客の資産を、独占的な投資機会なり、事業を含めたポートフォリオでヘッジするなり、つながれば御の字というわけです。

そのように、広げた大風呂敷を全力回収しようと思えば、うまくいくことばかりではありません。先ほど重要なKPIとして、「スイート・スポットの特定数」をあげましたが、そこに「献身性」を追加したいです。多くの事業オーナーは、凄まじいほどのリーダーシップを発揮して事業を拡大してきた方が多いですから、仕事に関して厳しい方も多くいらっしゃいます。ですから、重要なことを伝えなかったり、手を抜いたりする仕事の失敗は問題外ですが、自身では大したことのないと思ったことでも、叱られたり、その後連絡が一切取れなくなることなどざらにあります。例えば、私も、重要なことを伝えようと顧客に電話したとします。場合によっては、翌日つい客することによって怒る顧客もいれば、つい客しないことによって怒る顧客もいるわけです。怒られる中で、それぞれの顧客にとって居心地のいい営業マンになっていく必要がありますが、厳しい環境の中でそれでも相手に尽くせるかです。顧客のために、何ヶ月も使って事業案や顧客開拓をしたのに感謝されないことだってあります。とても辛いですが、それでも献身的でいられるかが重要です。何があっても絶対に諦めずにいられるというは、(私は)本気で顧客に恋してなければ無理です(笑)。それでも、全てを受け入れ、好きでいられるか、献身的でいられるかです。そうでなければ、顧客を理解することも、無理難題を全力回収することも、できないからです。

管理受託のマーケティング戦略

昨今、貸出引締を受けて、賃貸管理/建物管理、高属性の投資家の獲得、小口商品によって、金融アフォーダビリティの悪化をヘッジしようとしている会社様が多くなってきたという印象です。金融アフォーダビリティの悪化とは、金利上昇/貸出姿勢の悪化等によって、金融機関の施策によって借り手が減少することです。

これまでに、高属性の投資家のご紹介、管理受託、賃貸管理の収益化(15%戦略)、小口商品の開発など実施して参りました。小口商品の開発は、今複数社とプロジェクトを進行していますが、資金調達/顧客獲得/長期保有などの目的別に、どの免許を取るか、どこと連携するか、償還期間やロット、ファイナンスの構造の提供など戦略を組み立て、やることやらないこと、アウトソーシング/連携、交渉までを一貫して引き受けて参りました。

今回は、管理受託についてです。予定を含めて2018年中旬から、計5,662戸の受託を実施しておりますが、200社(名)/日程度の営業活動(本当に大変です...)、マーケティングPDCAが功を奏したという印象です。

営業活動については、単に物量をこなしているだけですので、多くを語ることはできませんが、マーケティングについては大体30程度のプランの中から確度の高いものを実証してきました。これは、これまでの経験上、マーケティングのキモは、「ニーズを捉える」×「予想(閾値)を超える」という原則に即したものです。

例えば、管理受託が可能と考える対象者は、不動産会社(再販、仲介、管理会社)と不動産投資家と考えます。そうした方々に対して、どのようなサービスを提供すれば、管理をいただけるのか考えた時に、今現状では下記のような切り口を利用してきました。

- 買取再販・仲介会社のオーナー

 - 貸出引締めを受けて、不動産市場からの撤退したい。

 - 管理によって投資収益が改善されるなら、販売しやすい。

- 管理会社のオーナー

 - 事業家人生の引退したいが引き継ぎ手がいない。

- 不動産投資家

 - より良い管理サービスを求めている。

このようなニーズがあることは実証済みですが、では実際にどのようなサービスをご提供できるだろうということまで含めてご対応しています。例えば、これまでにご提供してきたサービスは、

- 買取再販・仲介会社のオーナー

 - 不動産市場からの撤退したい。自社株の売却

 - 管理によって投資収益が改善されるなら、販売しやすい。→ 15%戦略による収支改善

- 管理会社のオーナー

 - 事業家人生の引退したいが引き継ぎ手がいない。管理受託もしくは自社株の売却

- 不動産投資家

 - より良い管理サービスを求めている。→ 15%戦略による収支改善

実際の営業活動においては、小口提案、コンサルフィー提供や顧客紹介によって収益をご提供し、その後のお付き合いの中でお取り引きいただくケースが多いです。引受会社に関しては、管理サービスの改革を条件に管理を移管することもあります。例えば、管理の収益を15%にあげる戦略を導入して、一部を管理料5%から割り引くことによって、不動産投資家にサービスするというものです。管理を引き渡す会社がオーナーに説明する際の材料が必要だからです。そして、管理の移管先は全て私の顧客に限りますが、受託先からコンサルティングフィーを求められた時やM&Aに関するフィー(弊社はレーマン方式を採用)以外は無償でご提供してきました。

上記の管理受託に関するお仕事は一例です。実際には、集客したい、資金調達したい、金融に関係なく経常利益を安定化させたいなど、目的を確認の上、それに即した手法について企画~導入までをお手伝いしております。

7月の事業会社設立にあたって、上記の活動を行うオペレーション人材を増員する予定です。引き続きよろしくお願い申し上げます。

これだけは知っておきたいシリーズ 〜債券〜

ポートフォリオの基本構成は、株式と債券です。ポートフォリオに組み込んだ債券は、株式下落時のヘッジ効果を期待することが多いですが、その効果の程度は時と場合によります。債券の構造とリスクを理解していれば、「債券=安心」は成立せず、慎重に選択する必要性をご理解いただけると思います。


債券とは、企業、国、地方公共団体などの発行体が、資金調達のために発行する有価証券です。投資家は、発行体にお金を貸す代わりに、利金(割引債であれば貸出金額より高い額面を獲得する権利)をもらいます。


債券は、発行日、 額面、利率、償還日などが決められて発行されます。資金調達をしたい発行体にとっては、借入日、借入金、額面に対して投資家に支払う利金の割合、返済日です。投資家にとっては購入日、貸す金額、貸したお金に対する利金の割合、貸したお金が帰ってくる日です。

その後、債券を買った投資家は、市中で売却したいと考えるかも知れません。その場合の債券価格は需給によって決まります。二人目以降の債券取得者は額面で購入しません(償還される金額は、額面の金額です)。例えば、額面100円、利率5%の債券があったとします。債券に対する需要が大きければ、利回りは4%でもいいから買いたい!という人現れるかもしれません。要求利回り4%の場合、利率は一定ですから、債券価格が高くなります。例えば、利回り5%=利金5円/債券価格100円かつ買い手の要求する利回りが4%の場合、利金は一定ですから、左項と右項を等しくするためには、分母である債券価格を引き上げます。この式に当てはめれば、不動産と同様に、債券は、買い手の要求利回りが上がることで価格が下がりますし、要求利回りが下がれば価格は上がります。買い手が増えれば増えるほど低い利回りとなり価格は上昇しやすくなります。


では、投資家の要求する利回りは、どのように決まるのでしょうか。

ベース金利+上乗せ金利(スプレッド)

ベース金利とは、基本的にその国で一番信用力のある国が発行する国債の利回りです。国債は、国が資金調達するために発行する債券であり、ベース金利とはその資金調達コストを指します。

上乗せ金利(スプレッド)は、 国よりも信用力の小さな企業などがお金を借りる際に、信用力や上述のような需給によって上乗せする金利です。

そのため、ベース金利(特に注目すべきは米国債利回り)が上昇→同じ通貨建ての機関債や社債などの債券利回り上昇、上乗せ金利が上昇→債券利回りが上昇することがあります。利回りが上がるということは、債券価格の下落を意味しますから、ベース金利や上乗せ金利の上昇は、債券保有者にとってはリスクです。


種類は多岐に渡ります。

- 政府の国債地方公共団体の地方債、政府関連の機関債:ベース金利の影響を受けやすいです。

- 格付けがBBB以上の投資適格債、BB以下の投機的各付債(ハイ・イールド債)→ ベース金利、スプレッドの影響を受けやすいです。

他にも、一定期間で利金(クーポン)がもらえる利付債、利金はもらえないが額面より安く発行される割引債(ゼロクーポン債)があります。


債券の価格変動要因として、以下の要因が挙げられます。株式とは異なるものですが、往々にして株式と同様に市場予想によって左右されるきらいがあります。

金利:市場金利が上昇すれば債券価格は下落し、市場金利が下落すれば債券価格は上昇します。例えば、中銀が金融緩和的政策に前向きなハト派に転じれば利下げ予想から債券価格は上昇しやすいですし、タカ派的なスタンスをとれば利上げ予想から債券価格は下落しやすいです。2013年には、当時FRBの議長であったバーナンキが、量的緩和の縮小に触れたことで、米10年物の国債利回りが急騰し、債券価格が10%以上下落しました。金利の主な変動要因は、「これだけは知っておきたいシリーズ~金利~」で触れた通り、インフレです。一般的に、インフレが予測されるな政策金利が引き上げられ、インフレ率の低下が見込まれるならば政策金利が引き下げられます。
信用:発行体の財務状況等の悪化で利金の支払いやお金を返還してもらえなくなる可能性が高まることによって、上乗せ金利が上昇します。例えば、国であれば財政赤字、企業であれば財務状況の悪化によって、上乗せ金利(スプレッド)が上昇することによって、価格が下落します。例えば、ギリシャ危機などデフォルト懸念が浮上することによってCDSがたくさん売られましたが、そうした懸念は同時に国債利回りは高騰させます。リーマン・ショックでは、デフォルト懸念からBB格以下のハイ・イールド債券(一般的に信用リスクが高い)は利回りが5%程度から20%を超え、価格が大幅に下落しました。また、昨年末には財務状況の悪化したイタリア10年国債の要求利回りが上昇し、価格が下落したことから、一時ドイツ10年国債とのスプレッドが320bpを超えました。(イタリア2年物も大きく下落しましたが、短期でのデフォルトは考えにくく割安でした)。他にも、5年前にエスピリト・サントが破綻した際は、株式が100%下落、続いて転換社債は96%下落、社債は徐々に下落して95%下落しました。注意すべき事項は、株式は倒産よりも前に上下動きがありましたが、転換社債社債は特に大きな動きがなかったことです。価格が安定的ということは、リスクを図る上で重要な指標ですが、それだけでは本来のリスクを見誤る可能性があるということです。
為替:外貨建て債券では、為替が変動することで為替差損が発生する可能性があります。例えば、昨年、米国の利上げに伴い、新興国通貨と比べて相対的に魅力的となった米ドルに資金流出し、新興国の通貨安が進行したことは記憶に新しいです。
投資家心理:「リスクをとってもいいから、高い利回りが欲しい」など、リスク資産に資金が流入する局面では、ハイ・イールド債や新興国債券等は本来のリスクに見合わないほどに、利回りが低下して、価格が上昇することがあります。上述の通り、サブプライム・ローンが破綻する前までは、資金流入が続いたハイ•イールド債は、金融ショックシナリオの実現によって大幅に価格が安くなりました。
このようなリスクは頻度が少ないと思われがちです。証券会社や多くの投資家は、株価であればモメンタムや、債券であれば平時の安定的な推移で判断する傾向がありますが、特にハイイールド債や劣後債、バンクローンなどは、信用リスクの顕在化によって値を大きく下げます。一見すると事例の少なそうな信用リスクですが、過去に何度も顕在化しています。高い利回りと言う理由で投資するのではなく、どのようなリスクが横たわっているか理解し、起こり得るリスクシナリオの構築やポートフォリオの目的に見合った債券であるかを見極める必要があります。

ちなみに、変動金利であれば、金利が変わっても債券価格は大きく動かないのではという問いもありますが、これは確かにその傾向があります。しかし、信用リスクが顕在化したならば、変動金利社債も、他の債券と同様に下落する可能性が高いです。


ポートフォリオを作る際の参考として、債券の利回りと、他のアセットの価格の間には深い関係があります。ご承知おきの通りですが、国債利回りが上昇すると、株式とREITも動きます。金利、信用、為替、投資家心理の変化を通じて、国債利回りは大きく変動するわけですが、その根源には、経済成長やインフレ率の上昇が横たわっているのです。つまり、経済成長やインフレによって景気が回復すれば企業業績が上昇することを意味しますから、株価は上昇します。また、債券利回りが急上昇した際は、一部のセクターの株式やREITは下落しやすいです。REITについては別の記事で触れますが、下落要因として、第一に、金利上昇による金融アフォーダビリティの悪化です。第二に、資本コストの上昇に伴うFCRが悪化します。第三に、割引率が上昇し、IRRが悪化します。一般的に、不動産と株式の間にはプラスの相関関係がありますが、国債利回りの上昇局面では、全く正反対の動きをすることがあるために注意が必要です。


○補足

-最近の金融政策

主要国の金融政策はハト派に転じつつあり、欧州を中心に債券価格が上昇しています。特に欧州の高格付や国債利回りはゼロに近く、インフレを勘案すると実質的にはマイナス利回りとなりました。

- ECBは先週の会合で、政策金利を19年末まで据え置く方針としました。また、銀行貸出を促進するTLTROの再開も発表しています。(欧州委の楽観的な見通しは注意が必要そうです)
- 中国は3月の全人代(国会のようなもの)で、金融政策に関する生命から「中立」という表現が消しました。※関税協議に伴い、中銀の政策に政治的な圧力が加わる可能性はあると思います。
- FRBは、ガイダンスで利上休止が数カ月続く可能性を示しています。※コアPCEインフレ率は低水準ですが、非農業部門の失業率と賃金の伸び率は好調で、インフレ懸念(利上げの可能性)があります。

いずれも、足元の経済成長率/インフレ率の予測の悪化が、金融緩和的な政策の根本にあり、金利が上昇しないという予測から、債券価格が上昇しています。


-債券の利回りの種類

債券の利回りの種類はら応募者利回り、最終利回り、所有期間利回りなど種類が多いですが、本質的な考え方は同じです。

(年間のインカムゲインキャピタルゲイン)/購入価格

これだけです。利回りの種類によって、タイムホライゾンが募集/購入~売却/償還の違いだけなので、言葉が違うだけで意味合いは同じです。他にも直接利回りというものがありますが、インカムゲイン/購入価格という公式で、キャピタルゲインを考慮しないので実用的ではありません。最終利回り(終利)だけ覚えておけばいいと思います。


-デュレーション

債券を購入する際に、疑問に思った方も多いと思います。(修正)デュレーションとは、「債券利回り変化に対して、債券価格がどの程度動くのか」を表します。単位は「年」です。例えば、デュレーション2年の債券利回りが1%上昇した場合、債券価格は利回り変化の約2倍である2%下落します。デュレーション3年でしたら、3%下落します。デュレーションが大きいケースでは、利回りが変化した時の価格変動が大きくなる傾向にあります。

これだけは知っておきたいシリーズ 〜金投資〜

今後、これだけは知っておきたいシリーズの展開として、クレジット(高格付/投資適格/ハイ・イールド/TIPS/EM債)、オルタナティブ(保険/戦略/絶対収益/不動産/リスクパリティ など)、株式(各種)、デリバティブや、ポートフォリオの作り方、経済のサイクルなどについて執筆したいと思いますが、前回の金利流動性に続き、今回は金です!

 

金のニューヨーク先物相場は、昨年10月の株式暴落を背景に、1オンス1,188ドルから上昇を続け、今年の2月には16年以来の高値である1,335ドルをつけました。不安定な経済やリスク資産の動向を背景に、株のヘッジ目的で金への資金流入が増しているためです。また、189月にバリック・ゴールドが、ランドゴールド・リソーシズを買収したことを皮切りに、金鉱業界においてM&Aが盛んになっています。

 

本日は、金について触れてみます。金の相場を左右する要因は、主に3つあると考えています。⑴実需、⑵リスク回避の動き、(3)米ドル相場(特に金利動向)です。

(1)実需

金の推定埋蔵量は57,000トンと言われていますが、年間3,100万トンのペースで発掘されており、このままでは枯渇してしまいます。供給は長期的に先細っていくかもしれません。一方で、新興国の経済発展を背景に工業需要が増したり、新興国の中間所得層の増加によって宝飾品としての需要も増しつつあります。こうした企業と消費者のみならず、新興国を筆頭とした中銀による需要の実需も増加傾向にあります。各国の政府の金準備残高を見ると、193月時点で、米中銀8,133トン、独中銀3,369トン、IMF2,814トン、伊中銀2,451トン、仏中銀1,040トン、露中銀2,119トン、中中銀1,864トン、スイス中銀1,040トン、日銀765トンです。米国に関していえば、ブレトン・ウッズ体制期から基軸通貨として米ドルを推進してきたために、外貨準備として他国の通貨を所有する必要がなく、一部を金購入に使ってきました。また、未だ保有量は先進国に及ばないものの、中露以外でもインドやトルコの金保有量が2007年以降急増しています。一般的には、世界的な基軸通貨である米ドルの信認が揺らいでいるという理由ですが、この流れは昨今のトランプ政権による制裁、制裁、制裁という外交によって加速する可能性があります。一方で東アジア諸国の外貨準備に占める金の割合はさほど高くありません。これは、米国からの圧力で米国債を買っているからと考えます。金の動向は、後述する通りドルの推移に大きな影響を受けますが、この中銀の保有量が重要視されることもあります。例えば、97アジア通貨危機です。FRB政策金利を大幅に引き上げたことによって、新興国から米ドルに資金が流出しました。これを受けて、97新興国の通貨安が加速し、自国通貨の下落を抑えるために新興国の中銀が金を大量売却したことによって、金価格は下落しました。主な変動要因は、短期金利による値動きですが、実需による影響も無視できないところです。

(2)リスク回避の動き

昨今のような不安定な経済環境やリスク資産の動向を背景に、市場センチメントが悪化する傾向にありますが、そのような局面では株式のヘッジ目的で金が買われることがあります。また、金は他の資産とは異なる動きをする傾向があります。ですから、リーマン・ショックのような金融ショック時にはポートフォリオの緩衝材として効果を発揮するかもしれません。実際にリーマン・ショックでは株式が大きく下落した局面では、金価格は上昇しています。チャイナショックや昨年10月の大幅な下落では、あまりヘッジ効果が見られなかったのですが、それは(3)による影響が大きかった問い考えています。

(3)米ドル相場(特に金利動向)

過去45年間のデータを取ると、ドルの動きに合わせて金は逆相関の動きをしてきました。FOMCの金融スタンスが以前までは19年に3回利上げ(75bp)を見込んでいましたが、一転してハト派的金融政策が見込まれ、利上げの市場予想(19年のFFレート市場予想)はほとんど0回になったことを受けて、2年もの国債利回りの上昇圧力が下落し、金価格にとってはいい材料となりました。一般的に、金には金利がつかないため、金利の上昇が生じるとドルや債券と比較して相対的な魅力が減少するためです。しかしながら、足元の米国の潜在成長率は2%程度、18年の実質的な成長率は2.6%、19年はというと雲行きが怪しくなりつつあります。例えば、堅調な企業設備投資とは裏腹に住宅投資がマイナス成長に転じました。日本同様、不動産価格の上昇と金融アフォーダビリティの悪化(金融機関が貸し渋ったり、金利が上昇したりすることによって、買い手が少なくなること)が理由です。さらに、米中のハイテクの覇権争いである貿易紛争も懸念材料です。「合意」にまつわるニュースはことあるたびに報道されますが、違反時の罰則など細かい取り決めを含めると早期決着は難しく、早くても19年後半の決着を見込みますが、しばらくの間関税による経済成長の押し下げ効果は継続しそうです。また、重要な課題として、19年以降は減税効果の剥落も懸念されるために、潜在成長率を下回る成長率とならないように、FRBハト派的スタンスはしばらくの間継続すると見込みます。すると、利上げに伴うドル高圧力の可能性は後退し、金相場にとっては追い風となる可能性があります。米国の双子の赤字(経常収支と財政収支の赤字)も、金相場にとっては重要な課題です。米国は約10年で赤字の膨張と削減を繰り返しているわけですが、19年以降はパターン通りに推移すれば、削減サイクルへと突入します。一般的には、双子の財政赤字が懸念されると、財政政策が取りにくくなるために、ドル安圧力がかかりますから、米ドルと比較して金(日本円保有分に対する為替ヘッジを行わない)は有利に推移する可能性があります。

ちなみに、金鉱株セクターの投資タイミングは、FRBタカ派に転じることによって、2年物国債利回りが下落してからだと考えていますがら現状MSCI ACWI株価指数MSCI素材株価指数、金鉱株を比較して見ると、金のPBRは、素材に対しても、世界株式全般に対しても相対的に魅力的な水準であります。上値余地は大きいと考えますが、それは当局の金融政策、金融ショック次第ということになるでしょう。

金融ショック、ボラティリティの高まり、ドルの下落に備えて、ポートフォリオの一部として、組み入れてもいいかもしれません。

 

補足 

金に投資すると一口にいっても、様々な方法があります。例えば、純金積立、純金裁定、地金、ETF、金鉱セクターの株式、金先物です。金の裏付けがある投資として、純金積立、地金、一部の金ETFがあります。地金は5年以上の長期譲渡で譲渡所得が1/2となる利点がありますが、保有コスト(保管等)が極めて高く、投資という意味合いではよくありません。純金積立は、地金ほどではないにしても、取引に関するコストが比較的高くかかります。金ETFは、保有通貨の選択が可能であるだけでなく、取引コストもやすいため、一応推奨していますが、マーケットによる需給にさらされやすいです。金先物については、裏付けがなく、証拠金による取引となるため投機的意味合いが強いです。何に投資するかは目的によって決めるべきと思いますが、コスト面、リスクシナリオへの対応策としての目的でしたら、ETFか株式でしょうか。

これだけは知っておきたいシリーズ 〜流動性リスク〜

前回少し長くなりすぎたので、今回はコンパクトにまとめてみようと思います。

リーマンショック時に米ハイ・イールド債が売られ、利回りが20%を超えて価格が下落しました。ハイ・イールド債とは、いずれクレジットの記事を書く際に触れると思いますが、低格付の企業・政府等が設備投資やM&A等の資金調達をするために発行する債券を指します。投資不適格債とも呼ばれています。低格付というのは、ムーディーズS&P社などの格付会社が、企業・政府などの信用を評価するのですが、ムーディーズならBa以下、フィッチやS&PならBB以下ということであり、投資適格債と比較してデフォルトリスクの高い(信用力の低い)債券が、一義的にハイ・イールド債とよばれます。ハイ・イールド債は、デフォルトリスクのプレミアムが乗った利回りを獲得できるため、比較的デフォルトリスクの小さいとされる国債と比較すると、利回りのスプレッドが大きい傾向にあります。このハイ・イールド債は、前回のブログで触れた「信用縮小」の局面で買い手が一気に減少する傾向があります。リーマン・ショックの前に、米金利が上昇すると、米国のハイ・イールド債は一気に売られ、流動性リスクが発生して、売ろうにも買い手がつかず、利回りが20%を超えて下落しました。恐ろしいリスクなのです。日本の不動産バブル時代の不動産も同様でした。

 

流動性リスクとはそもそもなんでしょうか。冒頭で触れた金融ショック時など、売買が極端に少なくなることで取引が成立せずに、売りたいときに売れない可能性を指します。株価は価格下落が予想されると買い注文が少なくなり、価格下落の圧力が強まります。 実際に価格下落が発生すると、さらに売り注文の圧力が強くなり、更なる下落も見込まれます。特に、取引規模に比べて大きな売りがある場合(特に小規模な市場)や、大きな資金を運用する投資家がいる場合は、流動性リスクが顕在化しやすい傾向にあります。例えば、2007年にベトナム株式市場がブームとなって、大量の資金が小規模なベトナム株に流入したことによって、株価は5倍以上に膨れ上がりました。 しかし、一度価格下落圧力が高まり、資金が流出しだすと株価は一気に1/5に下落しました。 最近は、CTA等の高頻度取引が増え、一度動き出した価格下落圧力が増幅される傾向がありますので、流動性リスクは顕在化しやすくなったと考えています。

 上述の通り、流動性リスクが顕在化すると、寄り付き前の売り気配のように価格がつかないことや、換金できないことがあります。例えば、2015年の中国株市場の取引停止、2016年英不動産ファンドの解約停止など、資産価格が下落しているのにも関わらずどうすることもできないといったことが発生しました。取引規模と比較して、海外ファンドなど大口の投資家が買っている場合は、そうした大口の投資家が売った時に買い手がつかなくなることがあり、他の投資家が魅力的と考える水準を超えても売りが落ち着くまで下落する可能性があります。冒頭で触れたリーマン・ショック時の米ハイ・イールド債も同様に、大幅下落しました。

 注意すべき点は、資金流入時には流動性リスクが大きな市場ほど値上がりする傾向があるので、一見すると魅力的に思えることです。そうした魅力と併せて、検討しなければならないことは、金融ショックに備えて、流動性リスクの大きさを把握することです。例えば、流動性リスクをはかる指標に、時価総額出来高があります。MSCI日本指数は時価総額437兆円、出来高2580億円であることに比較して、東証REIT指数は時価総額11兆円、出来高379億円です。最近できたインドREITや香港REITは高利回りですが、そのほとんどは出来高が極めて少ないものが多いです。そうした時価総額出来高に対して、例えば、日本株式市場に379億円の売り注文を出しても市場で吸収することができそうに思えますが、日本REIT市場に379億円の売り注文を出せば流動性リスクが顕在化することは必至でしょう。特に景気サイクル後期の流動性リスクが発生しやすい時に、中小株、ハイ・イールド債の商品を選ぶときは、時価総額出来高を確認することを推奨します。