PBに必要な能力

PBの仕事は、「資産管理でも、事業でも、顧客の求めることに対して、役に立ち続ける」と定義しています。その上で最も重要なKPIは「スイート・スポットの特定数」「献身性」であると考えます。 

会社にもよると思いますが、PB業の仕事は以下のような流れを辿ることが多いです。

(1)ソーシング(見込み顧客リストの作成に始まり、営業活動、ヒアリング)

(2)価値をもたらす機会の査定~プロジェクト(運用,事業)の策定

(3)法・税の調査、プロジェクト化(やることの分別,アウトソーシング等の決定、期日管理)

(4)エクセキューションとコンティジェンシー対応

事業、運用、趣味や慈善事業などプロジェクトごとに多少の違いはありますが、(1)顧客開拓を実施した後は、(2)プロジェクト策定〜(4)実行というサイクルをひたすらに繰り返すことが求められます。1人の顧客に対して、1人の営業マンが、数十年にわたって、多様なプロジェクトに挑戦します。主なバリューは運用や税務によってもたらされますが、これは顧客によって様々です。PBの顧客にマス層はいませんから、「顧客と顧客の目標もユニーク」という認識を強く持つべきです。例えば、「運用によって毎年8%の益がほしい」という顧客もいれば、「事業によって、より良い世界を創造したい」あるいは「版権者によって独占されたプロダクトが、世界の底に埋もれていく問題を解決したい」など、個々人によって達成したい目標は異なります。ですから、ただソリューションを提供するというよりは、顧客の横で思考錯誤しながら一緒に歩んでいくというフローです。

そのような多数のプロジェクトに取り組むなかで、私たちに必要な能力を考えてみたいと思います。

-領域ミクロ:経済、金融、会計など投資にまつわる分析能力。

-領域マクロ:運用戦略、ポートフォリオ構築、商品、マーケティング、戦略、資金調達、会計、税務に関する知識と経験。

-汎用能力:優れた人格、プロマネや交渉能力、豊富な人脈。

-働き方:24時間働くことの体力、最後までやりきる粘り強さ。

上記に列挙した能力はいわば一つのプロジェクトを完結するために必要な能力と言えます。一方で、訓練や気の持ちようでどうにかなるレベルの能力です。具体的なプロジェクトが目の前にあって、そのデューデリジェンスや実行支援という流れの中で求められる能力ではありますが、上記のような多様な項目について専門性を持ち、更新していくことは不可能です。しかし、矛盾するようですが、磨き続け続けなければいけない能力でもあると考えます。

一方で、上記の能力が功をそうするためには、「顧客を知る」能力が何よりも必要です。顧客が企業オーナーであれば、事業や趣味について詳しくなって、常に顧客が何に関心を向けているか、何をやり遂げたいか、何が嫌いかなどを飲み会や面談時にできる限り理解したいです。上述の通り、顧客自信も、顧客の目標自体も、それぞれユニークですから、絶対に平均化してはなりません。

私の認識では、そのような「ユニークな目標」について「プロジェクト完遂能力を発揮する」ためには、優秀な営業マンは特に(1)ソーシング、(2)価値の特定の点で優れている必要があると考えています。つまり、不況などの事業・運用が困難な情勢でも能力のある営業マンにとっては多大な機会が存在し、皆様のお役に立つことができますが、一方で,繰り返し大きな価値をもたらしうる機会を特定・実施できるプロセスを構築している営業マンは多くない印象です。これは営業マンの能力を図る上で非常に重要な点です。私は「無理難題テスト」と呼んでいますが、顧客が営業マンに対して、繰り返し無理難題を押し付けてみれば、上記の意味において優秀か優秀ではないか(役にたつか)判別できるということです。

ここまで、あらゆる能力について、語ってきましたが、本質的に最低限これだけは必要なKPIを問われれば、スイート・スポットの特定数です。それは顧客のニーズを捉える×多大な価値をもたらすというものです。その数が、最重要の指標だと思います。そのためには、「顧客のことを知り、本当に役にたつものは何か」を洞察する力とプロセスの構築が少なくとも必要という結論です。プロセスの方法も無限にあると思いますが、私の場合は研究サークルを組成しました。詳しくは「インナーサークル 「永遠に資本を生み出す装置」を目指して。」に記載の通りですが、上場企業・ベンチャー企業のオーナー、IBD。法務税務、慈善事業、アルバイトで構成する28名による事業・運用のスイート・スポットを特定・査定する団体を構築し活動しています。どのような活動であれ、スイート・スポットを特定し続けるための活動は、「ユニークな目標」について「プロジェクト完遂能力を発揮する」の根本にあると思っています。顧客の目標(ニーズ)を考えてみたり、その閾値を越えた解決策を考えてみたり、という流れは私一人という資本装備では、「繰り返し大きな価値をもたらしうる機会を特定する」ということも、「上述にあげた能力を一人でカバーする」こともとても難しいことですから。

多くの場合、「無理難題」「大風呂敷」が物をいう世界です。そうでなければ、多くの企業オーナーは、初回のアポイントメントを取るときも、その後のおつきあいの中でもこちらを振り向いてくれないためです。ですが、一度広げた風呂敷は何が何でも全力回収しなければ、信頼を失うだけです。逆に、「無理難題テスト」をクリアした暁には、信頼を獲得し、その後数十年に渡るおつきあいができる可能性があるのです。

「落し物を探します!任せてください」と宣言したならば紛失物の捜索をやり遂げなければなりませんし、「業界一優れたサービスを考えます!」と宣言したならばその会社がストップ高になるくらいやらねばなりません。「管理が欲しい」と依頼されれば、少なくとも1,000戸は提供しなければならないと考えますし、「有名人を紹介して」と言われたならば、オリンピックメダリストを無償で斡旋しなければなりません。最終的に顧客の資産を、独占的な投資機会なり、事業を含めたポートフォリオでヘッジするなり、つながれば御の字というわけです。

そのように、広げた大風呂敷を全力回収しようと思えば、うまくいくことばかりではありません。先ほど重要なKPIとして、「スイート・スポットの特定数」をあげましたが、そこに「献身性」を追加したいです。多くの事業オーナーは、凄まじいほどのリーダーシップを発揮して事業を拡大してきた方が多いですから、仕事に関して厳しい方も多くいらっしゃいます。ですから、重要なことを伝えなかったり、手を抜いたりする仕事の失敗は問題外ですが、自身では大したことのないと思ったことでも、叱られたり、その後連絡が一切取れなくなることなどざらにあります。例えば、私も、重要なことを伝えようと顧客に電話したとします。場合によっては、翌日つい客することによって怒る顧客もいれば、つい客しないことによって怒る顧客もいるわけです。怒られる中で、それぞれの顧客にとって居心地のいい営業マンになっていく必要がありますが、厳しい環境の中でそれでも相手に尽くせるかです。顧客のために、何ヶ月も使って事業案や顧客開拓をしたのに感謝されないことだってあります。とても辛いですが、それでも献身的でいられるかが重要です。何があっても絶対に諦めずにいられるというは、(私は)本気で顧客に恋してなければ無理です(笑)。それでも、全てを受け入れ、好きでいられるか、献身的でいられるかです。そうでなければ、顧客を理解することも、無理難題を全力回収することも、できないからです。