夜行

先週末は,インナーサークルの活動に時間を割く予定でした.仮定法過去形の理由は,順を追ってご覧いただければ,お察しいただけることと思います.

1125日午前打ち合わせ,池袋パルコでイベント参加,銀座ワイン仕入れ 

1125日夕方 定期パーティ,美術品コレクター宅に紅白歌手,役者,アカデミー賞監督,経営者,大学生が集まる.特別なことが起きることはなく,居酒屋談義のように話題は短命に移ろう.仕事の話をしたかとおもえば「お前はどんな女が好き?」.「いい女です」と答える.「女は顔ではない」「性格ではない」「では何だ」「立ち振る舞い」「いや違う.いい女とは」.「いい女とは」という男の永遠の問いを前に,百戦錬磨の男達に火が付き,全勢力を結集して立ち向かう一体感を感じた.しかし,健闘虚しく,一人,二人と敗れ去り,酒臭い寝床に果てた.

1126日朝 皆まだ眠っている.私は窓辺でぼけっとしていた.数分だか,数十分だか経った頃に,昨晩大量の酒を飲み干した監督が起床.あまりにも辛そうな表情だった.監督はこちらを一瞥すると,表情も変えずに第一声.「行くぞ」「おかえりですか」「そう,お前も行くか」「そうですね,僕もそろそろ」「箱根」「え?」
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26日昼
「アヒルボートに乗ったら,きっと帰るだろう」.電車の中で,本気でそう思っていた.故郷の藤沢を過ぎ,脳内では男2名がアヒルボートをぶつけ合って遊ぶという,極めて興味深いシーンが繰り広げられていた.実際には,監督のアヒルボートにぶつかったら怒られたのだけれど.箱根で,監督は無邪気だった.周りの視線を全く意に介していないようで,箱根の地べたにはいつくばりつつ,風景をパシャり.洋服と髭は,泥にマリネされていた.それでも無言で写真を撮り続け,しかめっ面をしたり笑ったりしている監督の姿は,言葉を選ばずに表現すれば,酔っ払いというより子どもっぽかった.

1126日昼から27日朝 飲み明かす.監督の次回作の資金調達は完了したが,その次の作品では必ず手伝うと約束した.監督は早く床につく.

1127日夕方 東京に戻る.ドイツ料理屋さんと打ち合わせ.知人のご婦人2名が来店.「こんばんは!」「おお!Sくん,またあったね」わたしは二日酔いでボケっとしていた.隣席では,ご婦人がクリスマスの話に一輪の花を咲かせていた.いや,おそらく一万輪くらいは咲いていた.小学生の頃のクリスマス会中高の頃のクリスマス会大学の頃のクリスマス会去年のクリスマス会幼少期のクリスマス会いつのまにかわたしは今年のクリスマス会でトナカイ役に任命されていた.新年会では門松の役をやることに決まった.その後も,クリスマス会の話が続き,しゃっくりが出てきた.ずっと止まらないので,見かねたご婦人が「喉のツボを押せば止まる説」を唱えながら,喉のツボを押してくれた.それでも止まる気配はなく,それを感じ取ったご婦人は両手に力を込めた.苦しくなったけれど,しばらくするとたしかに止まった.嬉しくなって「ありがとうございます!」と伝えようとしたが声がでない.ご婦人は何かを感じ取り,両手に力を込めた.涙が溢れてきた.あと少しで,トナカイになって天におさらばするか,一足先に門松になるところだった

思い返せば,連休は夜行のように過ぎていった.